（概要） 5G（第5世代移動通信）、IoT（Internet of Things）、自動運転をはじめ、ネットワークにまつわるサービスは飛躍的な発展を遂げつつあります。通信の高速化、端末の爆発的な増加、クラウドによる遠隔送受信をはじめとした大きな変化のなか、通信の信頼性とその効率性を担うTCPの存在感が増してきました。 本書では、TCPの「今」に主眼を置き、TCP/IPの基礎からTCPの主要機能、歴史、プロトコル設計、最近のLinuxで主要なアルゴリズムCUBIC、新しく登場したBBR、そして各種応用技術の最新動向まで平易に解説。合わせて、いまや欠かせない無線通信を想定している点も特徴です。押さえておきたいツールWiresharkやns-3による解析やシミュレーションの基本も丁寧にカバー。広く初学者の方々に向けて具体例を豊富に盛り込み、現場で役立つ技術基礎を平易に解き明かしていきます。 （こんな方におすすめ） ・輻輳制御をはじめとしたTCP技術に関心をお持ちのアプリケーション開発者の方々 ・基本＆昨今の動向をおさらいしておきたいネットワークエンジニア、インフラエンジニアの方々 ・インターネット技術の今を押さえておきたい学生の方々 （目次） <h4> 第1章TCP入門 ……通信の信頼性を保証する</h4> <li> 1.1通信とプロトコル ……OSI参照モデル、TCP/IP、RFC</li> <li> 1.2トランスポート層と通信の信頼性 ……データを宛先まで順序誤りや消失なく転送する</li> <li> 1.3UDPの基本 ……コネクションレス型のシンプルな機構</li> <li> 1.4TCPの基本 ……信頼性の保証とリアルタイム性</li> <li> 1.5TCPの基本機能 ……再送、順序制御、輻輳制御</li> <li> 1.6特定の用途向けのプロトコル ……RUDP、W-TCP、SCTP、DCCP</li> <li> 1.7まとめ</li> <h4> 第2章TCP/IPの変遷 ……インターネットの普及とともに、進化するプロトコル</h4> <li> 2.1TCP黎明期 ……1968～1980年</li> <li> 2.2TCP発展期 ……1980～1995年</li> <li> 2.3TCP普及期 ……1995年～</li> <li> 2.4TCP拡充期 ……2000年代後半～</li> <li> 2.5まとめ</li> <h4> 第3章［図解で見えてくる］TCPとデータ転送 ……信頼性と効率の両立へ向けて</h4> <li> 3.1TCPにおけるデータ構造 ……パケットとヘッダーのフォーマット</li> <li> 3.2コネクション管理 ……3ウェイハンドシェイク</li> <li> 3.3フロー制御とウィンドウ制御 ……多過ぎず少な過ぎず、 適切な転送量と受信側バッファ</li> <li> 3.4輻輳制御 ……転送量と、中身が見えない自律的なネットワークの状況の推測</li> <li> 3.5再送制御 ……確実かつ効率的に、高信頼通信の要</li> <li> 3.6TCP初期の代表的な輻輳制御アルゴリズム ……Tahoe、Reno、NewReno、Vegas</li> <li> 3.7まとめ</li> <h4> 第4章［押さえておきたい］プログラマーのための輻輳制御アルゴリズム ……増え続ける通信量とネットワークの動き</h4> <li> 4.1輻輳制御の基本の考え方 ……目的と設計、更新式の基礎</li> <li> 4.2輻輳制御アルゴリズム ……理論×シミュレーションで深まる理解</li> <li> 4.3プロトコルアナライザー「Wireshark」実践入門 ……輻輳制御アルゴリズムの観察１</li> <li> 4.4より深い理解へ。ネットワークシミュレーター「ns-3」入門 ……輻輳制御アルゴリズムの観察２</li> <li> 4.5まとめ</li> <h4> 第5章CUBIC ……3次関数でシンプルに問題解決する</h4> <li> 5.1ネットワーク高速化とTCP輻輳制御 ……ロングファットパイプがもたらした変化</li> <li> 5.2Loss-based輻輳制御 ……パケットロスの数を指標に用いる歴史ある手法</li> <li> 5.3BIC ……広帯域/高遅延環境を前提にしたアルゴリズム</li> <li> 5.4CUBICの仕組み ……3次関数で複雑な輻輳ウィンドウサイズ制御手法を大幅に簡略化</li> <li> 5.5［疑似コードで見る］CUBICのアルゴリズム ……おもな動作と処理内容</li> <li> 5.6まとめ</li> <h4> 第6章BBR ……スループットとRTTをモニタリングして、データ送出量を調節</h4> <li> 6.1バッファサイズ増加とバッファ遅延増大 ……メモリーの低価格化の影響</li> <li> 6.2Delay-based輻輳制御 ……RTTを指標にするアルゴリズムの基本とVegasの例</li> <li> 6.3BBRの仕組み ……データ送出量とRTTの関係を把握し、最大スループットを目指す</li> <li> 6.4［疑似コードで見る］BBRのアルゴリズム ……ACK受信時とデータ送信時</li> <li> 6.5BBRの振る舞い ……シミュレーションで見えてくる各種挙動</li> <li> 6.6まとめ</li> <h4> 第7章TCPの最新動向 ……アプリケーションや通信環境が変われば、TCPも変わる</h4> <li> 7.1TCPを取り巻く状況の変化 ……3つの観点「通信方式」「通信端末」「接続先」</li> <li> 7.25G（第5世代移動通信） ……モバイル通信の大容量化、多端末収容、高信頼/低遅延</li> <li> 7.3IoT ……多種多様なデバイスのインターネットを介した制御</li> <li> 7.4データセンター ……大規模化とさまざまな要求条件の混在</li> <li> 7.5自動運転 ……求められる高信頼/低遅延、大容量の通信性能</li> <li> 7.6まとめ</li>